GaNがパワー マネージメントの変化を推進する3つの理由
より高い電力密度とエネルギー効率を必要とするアプリケーションが増加する中、窒化ガリウム(GaN) は、シリコンの代わりに利用されています

2023 年 4 月 28 日

常時接続が求められる多くのデータセンタでは、エネルギー効率と電力密度を向上させる半導体技術が鍵となっています。

GaNと呼ばれる窒化ガリウム技術はワイドバンドキャップ半導体と称されています。電力密度、エネルギー効率、スイッチング周波数の向上、熱管理の改善、小型化など、電源装置を必要とする、高電圧アプリケーションに使用されるケースが増加しています。これらのアプリケーションは、データ センターに加え、エアコン(HVAC) システム、通信用電源、ソーラー インバータ、ノートPCのバッテリ電源などで使用されています。

「GaNは、さまざまなアプリケーションにまたがる電力システムや電源において、電力密度の向上、効率化を実現するための重要なステップです」と、TIのGaN製品ラインを率いるDavid Snookは語ります。「設計でGaNを使用する企業の数は急速に増加しています。消費電力の低減と効率の向上には欠かせません」

60 年以上にわたり、シリコンは半導体パワー マネージメント コンポーネントの基礎となっていました。交流(AC)から直流(DC)への変換、DC 電圧入力の変換を通じて、携帯電話から産業用ロボットまであらゆるニーズに対応してきました。しかし、部品が改良され、最適化が進む中で、シリコンは物理的な限界に直面しました。サイズを抑え、より多くの電力を供給するには高い周波数が必要ですが、現時点で、シリコンはその周波数で動作できません。

その結果、より多くの電力を小さなスペースで供給できるように、多くの回路設計者は、ここ 10 年間で GaN への切り替えを推進してきました。多くの設計者がこの技術の将来的な革新に期待を寄せる3つの理由を紹介します。

 

理由1:GaNの普及

シリコンに比べると、GaNは比較的新しい半導体の技術ですが、長年にわたり開発が続けられており、信頼性を確立してきました。TIのGaNチップは、4,000 万時間を超える信頼性テストを実施しています。そして、データ センターのように要求が厳しいアプリケーションでの有効性は明らかです。

「AI、クラウド コンピューティング、産業用オートメーションなどのアプリケーションで、消費者と企業が必要とするデータ量が増加するにつれ、データ センターのニーズは世界的に高まっています」と、David は語ります。「GaNは、より効率的なサーバー電源を実現するための重要な技術であり、データ センターのエネルギー消費量を過剰に増やすことなくオンライン状態を保つことができます」

 

理由2:GaNを使用したシステム レベルの設計でコストを削減

現在GaNは、チップ単体だとシリコンより高価ですが、システム全体のコスト改善、効率の向上、電力密度向上といったメリットは、初期投資を上回ります。たとえば、100MWのデータ センターでGaNベースのパワー マネージメント システムを使用した場合、わずか 0.8% の効率向上でも、10年間で最大700万ドルのエネルギー コストを節減につながります。これは、8万世帯ほどの小規模な都市の年間エネルギー消費量に相当します。

「GaN技術を採用し、より高い周波数で動作することで部品表のコスト(BOM)を節減できるいくつかのトポロジやアーキテクチャを実現できます。また、この高い周波数により、エンジニアは設計内の他の部品に関してもより小型のオプションを選定できるようになります」と、TI のパワー デザイン サービス グループのゼネラル マネージャを務めるRobert Taylorは語ります。「また、シリコン チップでは利用できないトポロジも、GaNを採用すると実現可能になるため、エンジニアは電源設計を最適化するフレキシビリティを確保できます」 

 

理由3:統合により、性能と使いやすさが向上

GaN FETは専用のゲート ドライバが必要であり、開発期間や設計工数が増えることになります。しかし、TIではゲートドライバをはじめ、いくつかの保護機能をチップに統合することで、GaNの設計を簡素化することができます。

「ドライバを統合することにより、性能や電力密度を向上させ、スイッチングの高速化を実現、効率を向上させ、全体的なシステム サイズの小型化することが可能です」と、David は語ります。「また統合することで、設計者は性能向上の利点と、GaNを使用した設計をより容易にすることで、この技術を最大限に活用できます」

 

性能上の利点

「データ センター向けの 5kWトーテムポール力率補正 (PFC) 設計のようなTIのリファレンス デザインをご確認いただくと、GaNの性能上の利点が、より魅力的に感じるでしょう」と、David は語ります。「ソリューション サイズの小型化と効率の向上、または同じフットプリントでより高い電力レベルを達成できるGaNの採用をご検討ください」

たとえば、モジュール式の住宅用エアコンを製造する企業の中には、設計にGaNを採用し、電源の効率を最大 5% 向上させたところもあります。

「エアコンが消費する電力を考えると、これは非常に大きい値です」と、Robert は語ります。「効率を5%向上させると、かなりのコストを節減できます。これは、GaNデバイスを採用することで実現可能な成果です」