より安全でスマートな自動車を実現する 6 つの半導体技術

あらゆる車載部品で、これまで以上に革新的かつ効率的な半導体技術が採用されています

11 12月 2023

現在の自動車は、人々の安全性を保つために、電力供給、センシング、プロセッシング(処理)を行う約 200 ~ 2,000 個もの半導体が搭載されています。自動車メーカーは最新の半導体を活用することで、これまでにない最先端の技術を駆使した自動車の開発が可能になります

では、この高度な半導体技術はドライバーへどのような影響を及ぼすのでしょうか?

私が車載向け半導体業界で働くことに魅力を感じる理由の1つは、私が自分の自動車に何を必要としているのかを考えるドライバーであると同時に、未来の自動車設計に組み込まれる技術に影響を及ぼすエンジニアでもあるからです。現在のドライバーが自動車に期待する要素は、20 年前のドライバーが期待していた内容とは大きく異なっています。以前は、地点 A から地点 B へどのように移動するか、どれほど安全に移動できるか、またどれほど迅速に目的地に到着できるか、という点を重視していました。

一方、現在では、公共交通機関が発達した一部地域を除き、多くの地域で移動手段として自動車を使用することが必須となっています。現在のドライバーが期待していることは、自律運転や自動温度調整シートを実現するセンサなど、快適性と利便性を実現する機能です。ドライバーが求めているのは、サラウンド ビュー カメラや、乗員や自動車の後方にある物体を検出するシステムによる、安全性とインテリジェンスの向上です。EV の普及に伴い、サステナビリティも優先事項の 1 つになってきました。TI の技術はこれらの期待を実現し、自動車のスマート化と安全性の向上に貢献します。

システムの進化

半導体の革新を通じて実現可能になった自律型システムは進化を続けており、より安全でより快適なドライバー環境に貢献しています。このようなシステムの例をいくつかを考えてみましょう。

高度なバッテリ管理システム (BMS) の採用で、バッテリの充電や正常性に関する精度と特性評価が向上し、ドライバーがより長い航続距離にわたり運転を続けることが可能となります。バッテリ監視技術の進歩に伴い、EV のバッテリ航続距離を延長し、充電状況の全体像を刷新することができます。その中には、EV の充電時間の改善や総所有コストの削減につながる、DC 高速充電や交換可能バッテリのような機能が含まれます。

ワイヤレス BMS、トラクション インバータ、オンボード チャージャ、DC/DC チャージャ、エアコン システムなど、複数のシステムに効率化と軽量化を実現し、ドライバーが 1 回の充電で実現できる航続距離の向上を実現します。

最大 800V の電圧に対応するパワー エレクトロニクスは、高効率の電力変換と電力密度の向上を実現するほか、絶縁機能を搭載しているためより高速で効率的な充電に適したより多くのオプションが利用可能になります。

先進運転支援システム (ADAS) は、高信頼性でインテリジェントな技術を必要とします。ADAS を搭載した自動車は、カメラやレーダー センサなどを使用して周囲の環境を高精度に感知し、高信頼性かつセキュアな方法でセンサのデータを送信した後、データの処理と伝達を行って、リアルタイムな意思決定を可能にするからです。

これらのシステムや、電子制御システム (ECU) の構造も変化を続けています。電気 / 電子系のアーキテクチャは、ゾーン アーキテクチャへ向かって進化しています。ドメイン アーキテクチャの機能別 ECU とは異なり、ゾーン アーキテクチャでは、自動車内の位置に基づいて、複数の ECU が制御を行います。従来は、ADAS やエアコン システムなど複数のシステムを統合する必要はありませんでした。現在のゾーン アーキテクチャの場合、フロントやリアといった ゾーンごとに処理を局所化することで複雑さを低減し、ソフトウェアを通じて機能や特徴を実現することができます。ソフトウェア デファインドの自動車アーキテクチャで必要になるのは、高速かつセキュアな通信ネットワーク、高精度センサ、スマートかつ効率的な負荷アクチュエータ、効率的な電力分配、高性能の集中型コンピューティング システムです。

6つの基盤技術

より安全でよりスマートな自動車の実現に向け、これらのシステムを後押しする6 つの基盤技術があります。

1. 高度なセンシング技術
電圧センシングからバックアップ カメラに至るまで、自動車全体の安全性と信頼性にとってセンシングは重要な役割を果たします。レーダー、電流、電圧、位置などを取り扱う高精度センシングについて考えてみましょう。

2. 電源
自動車全体の電源技術は、高い電力密度と高効率を、より小規模なフットプリントで実現する必要があります。小型パッケージに封止した統合型ソリューション、放熱管理を低減できるより効率的なスイッチング レギュレータ、より的確な保護に役立つ診断機能を考えてみましょう。

3. 高電圧システム
EV で業界目標を達成するには、最大 800V、時にはそれを上回る高電圧システムが必要です。TI の高電圧技術は、安全性の強化に役立つ高性能と信頼性を実現できます。絶縁と最先端の電力変換技術について考えてみましょう。

4. セキュアなデータ伝送
自動車内、さらに自動車の外部へ向かって送信する必要のあるデータの量は増加を続けています。TI のインターフェイス製品ラインアップは、シグナル インテグリティを犠牲にすることなく、セキュアなデータ伝送を行うのに役立つ帯域幅のニーズに対応できます。データのニーズに応じてスケール化できるフレキシブルな帯域幅に適した、有線とワイヤレスのソリューションを考えてみましょう。

5. モーター制御:
機能安全準拠デバイスは、モーター制御の複数の事例で信頼性とスケーラビリティの確保に役立ちます。制御アルゴリズムを内蔵したマイコン、A/D コンバータを内蔵したモーター ドライバ、高精度の移動に役立つセンシング IC について考えてみましょう。

6. 処理能力
処理能力が無ければ、自動車のスマート化は不可能です。処理能力は、自動車の頭脳です。シンプルな機能から、高度かつ自律型の運転アプリケーションをサポートできる複雑な処理能力までを考えてみましょう。

現在の自動車は、20 年前の自動車と同じ制約の下で動作しているわけではありません。私は、今から 20 年後の自動車がどうなるかを楽しみにしています。より安全な運転とともに、優れた運転環境を低コストで実現することは、ほんの始まりにすぎません。半導体がどのような方法で自動車テクノロジーの最先端を継続的に先導し、運転環境をどのように刷新していくか、この目で確認できることを私は嬉しく思っています。