より効率的なパワー マネージメントを実現する低静止電流 (IQ) テクノロジー

バッテリ駆動アプリケーションの需要が急速に増加し続けるなか、低IQ テクノロジーは、システム性能を損なうことなく、バッテリ寿命を延長することができます

01 2月 2024
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重要なポイント

  • 高度なパワー デバイスとバッテリ モニタにより、大幅な電力の節減が可能
  • 低IQ テクノロジーにより、電力損失を低減しながらデジタル回路の小型化を実現
  • 高速のウェークアップ時間 により、エネルギー消費を大幅に削減

エレクトロニクス テクノロジーとシステムの急速な発展により、バッテリは広く普及し、パーソナル エレクトロニクスから電気自動車 (EV) に至るまで、さまざまな機器に電力を供給しています。バッテリ電源への移行が減速する兆しはありませんが、より長時間にわたり、優れたバッテリ性能を維持する、という設計上の課題が残ります。

低IQテクノロジーは、その課題への解決方法のひとつです。IQ とは、スタンバイ モードやスリープ モードといったデバイスが起動しているが非アクティブである状態に消費される電力です。多くのバッテリ駆動デバイスは、99% の時間がスタンバイ モードにあり、必要な場合にのみアクティブになります。低IQには低電力負荷が関係しますが、バッテリ効率を向上させるには、IQを最小限に抑える機能が不可欠ですTI 独自の BiCMOS プロセス テクノロジーを採用した革新的な回路設計は、超低IQ  を実現し、システム性能を損なうことなくバッテリ駆動時間を最大化します。

「低消費電力テクノロジーは、さまざまな機器をバッテリ駆動させています」と、TI のバッテリ モニタ事業部でマネージャを務める Siddharth Sundar は述べています。「この結果、従来に比べはるかに幅広いデバイスの消費電力をどのように考えるか、という点に注目が移行してきています」

 

IQの革新がバッテリ駆動システムの成長をどのように推進しているか

ワイヤレス ヘッドセットやノート PC のような小型のパーソナル エレクトロニクスから、産業用の電動工具、EV、医療機器などのより大型のデバイスに至るまで、バッテリは急速に普及しています。

IoTテクノロジーが家庭、ファクトリ (工場)、企業で普及するなかで、このトレンドは継続すると予測されています。その結果、低I‌Qの革新は電力利用の効率を向上する重要な推進力となっています。

Siddharth Sundar quote

設計エンジニアは、長年にわたってパーソナル エレクトロニクス向けの低IQソリューションの開発に取り組んできましたが、現在バッテリを使用している大型の産業や車載向けのアプリケーションでは、従来とは異なる課題に直面しています。

EV は、電力を節約するためにアイドリング時は消費電力を低く抑えながら、高電圧の動的負荷を駆動できる状態へと、シームレスに切り替えられる必要があります。ドライバーにとって、長期間駐車した場合でも、EV車を運転するための十分な予備電力が保証されていることが重要です。

また、事故やその他の緊急事態が発生した場合に、別の小型バッテリの電力により車両緊急通報 (eCall) システムの緊急通話をかけられる機能も必要としています。

性能やコストを犠牲にしない

より多くのアプリケーションがバッテリ電源へ移行するなか、‌半導体テクノロジーの進歩により、低IQソリューションは、効率を向上させ、コンポーネントからのリーク電流を低減し、設計上の課題解決をサポートしています。

TI は性能、ソリューションサイズ、コストを妥協することなく、このイノベーションの最前線でバッテリ駆動アプリケーションにおける低消費電力を可能にする電源およびバッテリ管理デバイスの開発に取り組んでいます。

たとえば、TI の高精度の産業用バッテリ モニタ BQ76952 は、アクティブ時の 200μA ~ 300μA という消費電力に比べて、より小さい 1μA ~ 10μA というスリープ モード消費電力を実現します。スタンバイ‍モードでは電流量が 1/10 ~ 1/20 に節約できると同時に、さまざまな使用事例やシナリオに合わせて、性能と消費電力の間で適切なトレードオフを選択できるフレキシビリティを得られます。

Power Drill

プロセス テクノロジーの画期的な進歩により、設計エンジニアはバッテリ管理デバイスからのリーク電流の量も低減できるようになりました。大規模なデジタル回路、メモリ、大電力の電界効果トランジスタ(FET)では、より多くのリーク電流が発生します。しかし、TI の高密度レジスタや高密度コンデンサを最新の回路手法と組み合わせることで、デジタル回路を小型化し、リークする電流量やIQを低減させることができます。

「適切な高電圧コンポーネントを備えた専用の低消費電力プロセス技術は、チップのIQを低減するだけではなく、長期的な観点ではバッテリ駆動時間を延長するという点でも大きな違いを生みます」と、TI のバッテリ ゲージ事業部で設計ディレクターを務める Vishnu Ravinuthula は述べています。

 

高速ウェークアップ時間により、バッテリ寿命が延長

リーク電流を防ぐことはIQを低減するひとつの方法です。別の方法として、デバイスがスタンバイ モードと高電力負荷の駆動モードの間で迅速かつ効率的に切り替えを実行できるようにするというものがあります。電源の精度は、実際の出力がプログラム 済み出力にどれだけ近接しているか、という測定値でもあります。この測定値は多くの場合、負荷過渡応答による制限を受けます。負荷過渡応答は、負荷電流または電源電圧に突然の変化が生じた後、デバイスがどれほど迅速に目標の出力電圧へ復帰できるかを表す測定値です。負荷過渡が長くなるほど、デバイスがスリープ モードからアクティブに切り替わるため、エネルギー消費が増加します。TI の高速コンパレータや、ゼロIQフィードバック制御などの高速応答時間により、低い消費電力で、過渡応答を最小限に‍抑えられます。

たとえば、TI の降圧スイッチング レギュレータ電圧スーパーバイザは、業界最高クラスの応答電流時間と電流検出時間を実現しているため、デバイスは迅速に起動し、電力を節減することができます。

「起動時間の短縮は、利便性に対するユーザーの期待に応えるだけではありません」と、TI で昇圧コンバータ / コントローラ事業部のマーケティング マネージャを務める Vladislav Merenkov は述べています。「この特性により、消費エネルギーを大幅に低減し、バッテリ駆動時間が向上します」

エレクトロニクスの発展に減速の兆しはなく、IQの ‍革新により、今後さらに多様化された環境で、洗練されたバッテリ駆動デバイスの電力効率を最大化できるようになります。TI の低IQテクノロジーは、スタンバイとシャットダウンで電力モードが小さいため、バッテリ駆動時間と保管期間を延長し、性能を犠牲にすることなくコストを削減することができます。